【護身術メルマガ! ex/合気道】No.13          2006/12/28
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◇◆◇『「子どもへの護身術指導」について 』◇◆◇
文責:合気道S.A.茨城 豊田龍彦               
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 子どもを狙った犯罪が多発しております。
それを受けて,ここ数年,全国の小中学校では,不審者への対応を想定した避難訓練や,護身術のセミナーなどが行われるようになってきました。
 そこで,子どもが必ず指導を受ける事項の一つに,「危険な目に遭いそうになったら,大きな声で『助けて』と叫びながら逃げなさい。」
というものがあります。
 確かにある意味,それが「究極の護身術」であるかもしれません。
私自身も,子どもにはよくそういう話をします。
しかし,「大声を出して逃げなさい」という指導は,現実的ではない,と考えさせられる出来事がありました。

 以前,私の受け持った中学3年生の教室に,「刃物を持った不審者が侵入してきた」という想定で,避難訓練を行ったことがあります。
 生徒にはあらかじめ,「○時○分に,ここのドアから不審者が侵入するので, 私が取り抑えている間に,こういうルートで逃げなさい。」と話してありました。しかし,不審者に扮装した人間が,大声をあげながら教室に姿を現した瞬間,生徒はパニック状態になってしまいました。一瞬,時間が止まったかのように見えました。私の「逃げろ!」という絶叫の声で,やっと我に返った生徒は,机やイスを跳ね飛ばしながら,慌てて避難を始めました。私と応援に駆けつけた他の職員が不審者役の人間を取り抑えるまで,およそ2〜3分。死傷者10人を超える大惨事となっていたと推測されます。実際にあったことなら,もっと酷い事件になっていたでしょう。

 人間は,予測不能の出来事に遭遇した場合,パニック状態に陥る。
そのことを,改めて実感した出来事でした。
筋書きのある避難訓練で,中学3年生ですらこの有様です。
小学生だったら,果たしてどうでしょう。
パニック状態の子どもが,大声を出して逃げることは可能でしょうか。
ましてや,最近は腹から声を出すことのできない子どもが増えています。
「大声を出して逃げる」ということを頭では理解していても,実際には体が動かないのではないかと思うのです。

 護身術は,知識や技術だけを身に付けても使えません。
 何事にも動じない,強い精神力を身に付けていなければなりません。
日々の修練によって得た経験,経験に裏付けられた自信,自信から生まれる強い精神力が,護身の知識や技術を支えるのです。

 私は,今までに小中学生向けの護身術講座を何度か開いてきました。
知識や技術を学んだだけで満足しないよう,呼びかけています。
修練を続けていくことの大切さを,これからも話していきたいと思います。

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