T.Tのたちばなし


 小高い丘の上にある公園で,ホタル鑑賞会があると聞き,娘を連れて出かけた。

 写真は撮らなかった。マナー違反であるという思いもあったが,よりその映像を,記憶にとどめたいと思ったからである。

 帰る方向を見下ろせば,静寂と闇。突然,タタタタン,と列車の通り過ぎる音。水面に車窓から漏れる光が映る。

 どこから来るの?どこへ行くの?何が乗ってるの?娘はたずねる。

 私は,ありきたりな回答をしようとして,ふいにちょっと思い直し,次のように答えた。

 この電車はね。過去から来て,未来にゆくんだよ。人の想いを乗せてね。

 前回,蛍を見たのはいつだったろう。あの時の,私の想いは,まだ残されているだろうか。そして,未来に届いているだろうか。

 約20年ぶりに,宮本輝の『蛍川』が,無性に読みたくなった。(T.T


久しぶりに実家で新春を迎えた。学生時代を過ごした懐かしい一室で,何気なく手に取った一冊の本は,手塚治虫の短編集。その中の一遍に,このような一節があった。

『人生とは何か。何のために人間は生まれてきて死ぬのか。それは今を生きるためである。そして青春は,今生きていることを確かめるためにあるのだ』

ならば,「青春」とは次のようにも解釈できる。「青春」とは,人生のある一時期を指すものではない。ワークライフバランスを実現し,生きがいや充実感を味わうことができていれば,その時がその人にとっての「青春時代」となるのだ。

人生を豊かにする,このようなプラスの解釈変更なら大歓迎である。しかしながら,閣議決定による憲法9条の解釈変更はごめんだ。家族を,仲間を,教え子を,絶対に戦場には送りたくない。人生は一度きりである。

私は今を生きたい。(T.T


人と人の出会いって,星座みたいだなって思う。組合活動に携わるようになって,その思いはますます強くなった。

帰宅途中,何気なく夜空を見上げると,満点の星空。実際には,星と星の間には,気の遠くなるような距離が存在するのだろう。しかし,夜空の星々は,何か見えないつながりに守られているかのように,星座にまつわる物語を,私たちに語りかけてくる。

人と人のつながりも,そういうものなんじゃないかって,改めて最近,思う。人と人の出会いは,偶然ではなくて,全て必然のものだ。たとえ遠く離れていても,私たちは見えないつながりに守られて,日々を過ごしている。それを忘れなければ,どんな困難にぶつかっても,元気に楽しく生きてゆける。

20年前に,日比谷野外音楽堂で聴いた,こんな歌の一節を思い出した。

「心は星座だね。愛だけが光る目印

  〜杉山清貴「Happy  & Singles」よりT.T


夕焼け雲にうろこ雲が輝く,この美しい季節が訪れると,いつも思い出すことがある。

私たちはいつも三人でいた。遊び疲れた頃になると,夕陽のオレンジが,木々の枝に実り,幻灯のように映し出していた。

畑のど真ん中の,一番高い木にのぼると,遠くに町の灯が見えた。その光は,うすぼんやりと,私たちの未来を照らし出しているようで,まだまだ知らない世界がそこにあることを,教えてくれた。

とりわけ,一瞬しか見ることのできない,黄色のシグナルが,何よりも貴重で,美しいものに思えた。もうすぐ別れが来ることを,知っていたから。いつまでも子どものままではいられない。

三人でのぼったあの木は,今はもうない。しかし,あの日,三人で分かち合った思いは,あの場所に残っている。思い出だけは,美しいまま,その場所に残っている。T.T


「大人になったら,何になりたい?」次女に尋ねた。長女がすかさず間に入る。

「総理大臣になったら?総理大臣になれば,何でも自分の思い通りにできるよ」姉の皮肉たっぷりの提案である。妹は,自分の利益追求のためには,手段を選ばない。容赦なく武力を行使し,食事と玩具を確保する。

「総理大臣になったからって,何でも自分の思い通りにできるわけないでしょ!」と,つっこみを入れようとして,言葉を飲み込んだ。現政権の動きを見る限り,なるほど確かに言い得て妙である。自分の欲望を満たすために,私腹を肥やすために,政治を利用し,武力の行使を容認することは,断じて許されない。

で,次女の回答。「お父さんと結婚する。お父さんが王子様で,私がプリンセスね」某有名アニメの影響である。必殺技のポーズを真似する次女の姿を眺めながら,歩む道は長く険しいな,と改めて思った。T.T


久しぶりに,吉野弘の詩集を手に取った。この詩人は,飾らない眼差しで,飾らない言葉で,飾らないリズムで,深く,柔らかく,そしてユーモラスに,人生の真実を描き出す。

「虹の足」という詩がある。自分の家が,もし虹の足の中にあったとしても,それに気づく者はいない,という内容の作品である。

語り手は次のように結ぶ。「そんなこともあるのだろう/他人には見えて/自分には見えない幸福の中で/格別驚きもせず/幸福に生きていることが

 果たして,自分はどうだろう。もしかしたら,自分も,虹の足の中にいることに,気づいていないのではなかろうか。

当たり前の日常の中にこそ,幸福はある。雨上がりの後には,美しい希望と,輝かしい未来が待っている。自分は常に虹の足の中にいる。

そう思いながら,日々を過ごしていきたい。そして,伝えていきたい。T.T


家に一冊の詩集が届いていた。恩師が贈ってくださったのである。その「あとがき」に,こう書かれていた。

 現代日本において,もっとも求められているのは,他ならぬことばの厳密性である。ことばを厳密に使おうとする,ことばへの真摯な姿勢である。東日本大震災における原発事故は,日本社会のことばがいかに脆弱で,ご都合主義に陥っているかを痛感させることになった。私はあえて,怒りという感情を改めて意義づけたい。「私」の怒りを「公」としてのことばへと鍛錬していくこと,これがさし当たり私に課せられた義務である。そこには日常を無警戒に受容してきた自分自身への抗議も含まれている。地震と津波と原発は,私のなかに畳み込まれていた遠い日の三陸の風景を,思い起こさせた。そこに原発は,ない。(橋浦洋志著『幻花の空』より一部抜粋・編集)「核と人類は共存できない」その思いを,私は新たにした。(T.T


 次期学習指導要領について「審議のまとめ」が出された。アクティブ・ラーニングや道徳の教科化など,議論していかなければならない課題がたくさんある。

中でも特に心配なのは,小学校の外国語教育の動向である。小学校中・高学年ともに,時数が年間35時間増加する見通しだ。授業時数を確保する手段として,国は,1015分の短時間学習や60分授業を提案している。ふざけた話だ。既に限界となっている時間割に組み込むことは困難である。

外国語教育そのものに反対するつもりは毛頭ない。しかしながら,子どもと教職員の負担が増加することは間違いない。免許の問題もある。評価の問題もある。

県内でも,夏季休業期間等を縮小したり,土曜授業を始めたりする自治体もあり,余談を許さない状態だ。新しいことを始めるなら,まず事業の精選を行え。そして,環境を整備せよ。と強く言いたい。(T.T


929日,全国学力・学習状況調査の結果が公表された。茨城県教委はHP上で「2教科の8分野のうち7分野で全国の正答率を上回りました」と発表した。全国正答率を下回ったのは中学校の数学Aだそうである。ネットで検索すれば,茨城県の順位もすぐに確認することができる。

全国学力・学習状況調査における事前練習が,全国的に問題になっている。馳浩前文科大臣は,「過去問をやらせるなんて,とんでもないことだ」などと発言した。それを受け,文科省は「過度の競争につながる事前対策を行わないこと」とする通知を出した。

これまで茨城県教委は,事前対策のために過去2年間の問題を活用するよう指示してきた。現場では大変な負担になっている。授業にしわ寄せも出ている。県教委の今後の動向に注目しなければならない。数字だけに目を奪われ,踊らされることのないよう,冷静な対応を求めたい。(T.T


長女の中学校入学式で,新入生保護者代表として謝辞を述べた。その挨拶の中で,保護者の立場から,教職員の長時間労働の問題について訴え,働き方改革をすすめていただくよう求めた。異例のことであり,賛否両論あったことと思う。しかしながら,校長先生を始めとした教職員の方々,地域・保護者の方々等,多方面から「よくぞ言ってくれました!」と,賞賛と激励の言葉を多数頂戴した。

今,「教職員の時間外労働に上限規制を設ける」ことを求めるネット署名が爆発的に広がっている。これまで,その職務の特殊性から「仕方ない」とあきらめていた全国の教職員が,ようやく立ち上がったのである。世論は高まりつつある。教職員の働き方改革をすすめる絶好の機会が到来した。「組合に入ったら何かメリットがあるの?」と聞いてくる人がいる。私は「組合に入って,一緒にメリットをつくっていきましょう!」と,呼びかけたい。(T.T


久しぶりに,吉野弘の詩集を手に取った。この詩人は,飾らない眼差しで,飾らない言葉で,飾らないリズムで,深く,柔らかく,そしてユーモラスに,人生の真実を描き出す。

「虹の足」という詩がある。自分の家が,もし虹の足の中にあったとしても,それに気づく者はいない,という内容の作品である。

語り手は次のように結ぶ。「そんなこともあるのだろう/他人には見えて/自分には見えない幸福の中で/格別驚きもせず/幸福に生きていることが

 もしかしたら私たちも,虹の足の中にいることに,気づいていないのではなかろうか。

組織率の低い他単組の友人から,こんなことを言われたことがある。「茨城の教職員は,組合の力によって自分たちが守られている,ということに気づいていない人が多いよね」

全国でも有数の高い組織率を誇る茨教組。その現状に感謝し,さらなる組織強化・拡大にむけて運動をすすめていきたい。(T.T


茨教組はこれまで「時短協議」を県教委と継続して行ってきた。部活動に関しては,特に朝練習の問題について議論をすすめている。

現在,県外では,長野県教委が「睡眠不足を招き成長に弊害がある」として,朝練習を原則禁止するという方針を打ち出した。愛知県教委も「医学的に推奨できるものではなく原則として実施すべきでない」という見解を示している。県内でも,那珂市,ひたちなか市,行方市,神栖市などで朝練習に規制をかける動きが出ている。

茨城県教委も「県全体で一斉に規制かけることは難しいが,部活動の状況を改善していくためにも検討すべきである」と回答している。

部活動の意義すべてを否定するものではないが,部活動の適正化が喫緊の課題であることは間違いない。働き方改革の風が吹いている今,各学校で部活動の問題点について議論することを提起したい。(T.T


県教委は,2017331日に「運動部活動における適切な休養日の設定等について」という通知を出した。その中で,朝練習については次のように記載がある。

「生徒の健康や生活リズム等に配慮するとともに,生徒や保護者に対して十分な説明と理解を得た上で実施すること」

果たして,現状はどうだろうか。子どもの健康や生活リズムに配慮されているだろうか。子どもや保護者に十分な説明と理解が得られているだろうか。

私は,部活動の意義すべてを否定する立場ではない。しかし,教職員の長時間労働を是正するために解決しなければならない大きな課題の一つだと考えている。

筆者も,過去に部活動顧問として家族を犠牲にしてしまった経験がある。その反省を込めて,各学校で部活動の問題点について議論することを提起したい。(T.T


昨年,週刊「東洋経済」で,40ページにわたり,「学校が壊れる」という特集記事が掲載された。一般の経済誌に,このような記事が特集されるというのは異例のことであり,画期的なことである。

その記事の中で,『ブラック部活動』の著者としても有名な名古屋大学教授の内田良さんが次のような主張をしている。

「『学校教育の一環』という学習指導要領の文言によって,教員は部活動指導を強制されてきた。本来,自主的な活動のはずなのに強制的で,自主的な活動であるがゆえに過熱している。ゆとりある部活動への転換が必要だ」

「将来的には練習日を週23日にまで減らし,全国大会を廃し地方大会までとした上で,参加を年に1回までとするなど大幅な総量規制が不可欠である」と訴えている。

働き方改革の風が吹いている今,各学校で部活動の問題点について議論することを提起したい。(T.T


これまで茨教組では「全国学力・学習状況調査」に関する実態調査を行い,事前対策の実態や調査の問題点,課題を把握してきた。

昨年度,茨城県内44市町村のすべてに調査を依頼し実態を把握したところ,ほぼ全ての学校で,過去問や独自に作成された練習問題等を利用して事前対策を行っていることが分かった。子どもや教職員の多くが負担を感じ,授業等にも影響が出ている。また,多くの学校で調査実施後に自校採点を行っており,教職員の超過勤務の原因となっている実態も明らかになった。早急に是正しなければならない課題である。

文科省は,調査結果を2018年度から7月末ごろに公表する方針を明らかにしている。これまでより約1か月前倒しされることになった。このため,自校採点および独自の分析・調査の必要性は薄まったと言える。今後,歯止めをかけるよう県教委や市町村教委に要請していきたい。(T.T


昨年度の「全国学力・学習状況調査」では,茨城県はすべての分野で全国平均を超えた。県教委は,その成果の一つとして「みんなにすすめたい一冊の本推進事業」等を挙げている。

県教委は「読書が国語力を養う基礎となった。国語B問題への対応にも効果があった」などと主張している。茨教組は「一定の成果が出たのならば,学校独自のとりくみに任せるべきではないか。弊害も出てきているので,やめるタイミングなのではないか」と訴えた。

県教委は「弊害が出ていることは承知しているが,それは指導の仕方の問題である。読書の量より,質を大切にして欲しい」というような回答をした。

筆者は国語の教員として読書教育を推進する立場だが「みんなにすすめたい一冊の本推進事業」の効果に関しては懐疑的である。引き続き,その問題点について訴え,廃止・縮減を含めた是正を求めていきたい。(T.T


20171221日,文科省は2018年度「全国学力・学習状況調査」の実施についての通知文と実施要領,調査への参加および協力についての照会文書を発出した。2018年度の実施要領では,理科の調査を行うことや,本体調査に加えて中学校の英語の予備調査を抽出で実施することなどが明記された。また,2019年度には英語調査の実施が予定されており,子どもや教職員にさらなる負担をかけることが予想される。

そして調査結果については,2018年度から7月末ごろに公表する方針を明らかにしている。これまでより約1か月前倒しされることになる。このため,自校採点および独自の分析・調査の必要性が薄まった。今後,自校採点に歯止めをかけるよう,県教委と市町村教委に要請していく予定である。そして引き続き,悉皆調査の廃止と調査内容の抜本的見直しを求め,交渉・協議等のとりくみを強化していきたい。(T.T


新学習指導要領は,小学校では2020年度から,中学校では2021年度からの全面実施となる。そして,小・中学校ともに20184月からの移行措置案が示されている。特に懸念される小学校の外国語活動については,「中学年で15時間,高学年で50時間実施すること」とされている。

学習指導要領の問題に詳しい上智大学教授の澤田稔さんは,「カリキュラム・マネジメント(カリマネ)」における目標準拠評価の危険性を指摘している。そして,次のように主張している。

「目標から子どもを見る前に,子ども一人ひとりの存在が肯定される空間づくりを優先すべきである。ゴールフリー評価(目標にとらわれない評価)や個人内評価(子どもの良い点や可能性,進捗状況等をみる評価)の重要性を再認識しなければならない」

今こそ,私たちが求めるべき学力とは何か,問い直す機会だと感じている。(T.T


宮城県の東松島市が,小中学校の夏休みを5日減らし,授業を30時間増やす方針を明らかにした。宮城県では,全国学力・学習状況調査で多くの科目が全国平均を下回っているそうだ。その中でも東松山市は,小中学校の全科目で県平均を下回っているので,学力下位返上を目標としているようである。

上智大学教授の澤田稔さんは,目標準拠評価の危険性を指摘し,次のように警鐘を鳴らす。「目標から子どもを見る前に,子ども一人ひとりの存在が肯定される空間づくりを優先すべきである。ゴールフリー評価(目標にとらわれない評価)や個人内評価(子どもの良い点や可能性,進捗状況等をみる評価)の重要性を再認識しなければならない」

東松島市教委は,東日本大震災が学力低下に影響しているとも分析している。ならば,目標から子どもを見る前に,目の前の子どもの実態から対策を始めるべきなのではないだろうか。(T.T


子どもの児童クラブの保護者会で,映画『みんなの学校』の上映会が行われた。

「不登校も特別支援学級もない同じ教室で一緒に学ぶ/ふつうの公立小学校の/みんなが笑顔になる挑戦」と銘打たれたこのドキュメンタリー映画を観て,心が震えた。そして初心を思い出した。

望ましい学校組織のあり方,子どもたちへの支援のあり方,評価のあり方などについて,改めて問い直す機会となった。

多くの教職員に,この映画を観ていただきたい。地域・保護者の方々,ならびに教育関係者の方々にも観ていただきたい。そして,この映画をもとに議論を交わしていただきたい。

『みんなの学校』の舞台となった大空小学校では,インクルーシブ教育が実現している。「今の時代に欠けているもの」が詰まっている。このような学校が存在するという事実が,私たちに希望を与えてくれる。(T.T


当たり前のようなことだが,今さらながら,映画『君の名は。』を観て得た新たな気づき。

年を重ねるごとに,時の流れが速くなる。

 大人になると,その思いが強くなる。

時間は,全ての人に同じようには流れない。

時間は,絶対的なものではなく,相対的なものである。

成長していく者の時の流れはゆるやかで,

老いていく者の時の流れは速くなる。

体の老いを止めることはできない。

しかし,心はいつまでも成長し続けることができる。

ならば,心が体を追い越したら,

時間をさかのぼり,

過去の世界に行くことができるのではないか。

少なくとも,心だけは。

過去に学び,

今を知り,

未来を創ろう。(T.T


娘の影響で,K-POPの女性グループ「TWICE」のファンになった。若い頃から,芸能界に全く興味が無く,好きなアイドルなどもいなかった私にとって,これは衝撃的な事実であり,自分でも驚いている。

ファンになった理由はいくつかある。

一つめは,メンバー構成が多国籍ということである。メンバーは9人いるが,その内訳は韓国5人,日本3人,台湾1人である。政治の世界では様々な壁があるが,音楽の世界では垣根を越えて,ともに喜びを共有することができる。こんな素晴らしいことはない。

二つめは,お互いの文化を尊重しようとする姿が美しいからである。くくりとしてはK-POPのジャンルに入るが,日本開催の公演では日本語バージョンを披露している。少し訛りのある日本語が,何故か耳に心地よい。9人それぞれ魅力的で,みんな違ってみんないい。勿論,お気に入りの曲は,ポーズが日本でも話題になった「TT」である。(T.T


 

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