⑧ 卒業に向けて「たけのこ」

 

卒業詩集「巣立ち」編纂のために実施した

「たけのこ」の授業(比喩による詩の創作指導)について紹介します。

 

卒業文集というと,

テーマが「小学校生活の思い出」とか

「中学校に向けての抱負」であることが多く,

児童の書く文章が同じようなものになりやすいという問題があります。

そして堅苦しいイメージがあり,

個性的な表現が生かされにくい傾向があります。

 

しかし「卒業詩集」は,より自由な雰囲気で華やかさがあり,

そこに寄せられている詩はバラエティに富んでいます。

また既存の一般的な卒業文集に比べて,

児童の思いがよく表現されており,読み手も楽しむことができます。

 

そこで,小学校最後の詩の創作指導単元を構想しました。

小学校を卒業するにあたって,

将来のイメージを「たとえ」(比喩)を使って詩で表現する,

という単元です。

 

比喩は詩の技法の基本の一つです。

詩のテーマを比喩で表すと,

子どもたちの考え方を引き出しやすいことが明らかになっています。

「比喩による詩の創作指導」は,

「生活思想詩」を作り出す方法として有効なことも分かってきました。

 

構想した授業案及びモデルとした詩を以下に引用します。

 

   みなさんは,もうすぐ,卒業ですね。

   これから,どんな人になりたいですか。

   「もの」にたとえて,書いてみましょう。

   たとえる「もの」の特長を,しっかりとつかんで,

   自分の「思い」をかさねて,詩の形で書いてみましょう。

   ●●くんは,絶対にプログラマーになりたい,と思っています。

   その「思い」を「たけのこ」にたとえて書きました。

 

     たけのこ   6年 ●●●●

 

   ぼくは たけのこのような

   人間になりたい。

   たけのこは 先がとがっていて

   根性が あるように見える。

   いや ほんとうに あるのだ。

   どんな悪条件の中でも

   天をめざして すくすく伸びる。

   人に食べられたり 虫にくわれたりする。

   そのいくつもの難問をのりこえながら。

 

   ぼくもプログラマーの道をはずすことなく

   大きくなっていく。

   たけのこのように

   これからも ずっと

   一つのことをめざし

   そして 大人になっても

   竹のように

   しなったり ゆれたりしながら

   時のながれにさからわずに

   時代を生きぬいていきたい。

 

   「プログラマーになりたい」という「思い」と,

   「たけのこのように生きたい」という「たとえ」が,

   よく合っていますね。

   みなさんも,将来なってみたいことを決め,

   「もの」にたとえて,詩を書いてみましょう。

   詩が書けたら,文集を作って,みんなで読み合いましょう。

 

この授業案を踏まえ,

次の流れで授業を行いました。

 

 ① 作品「たけのこ」を読んで感想を書く。

 ② 将来の「なりたいもの」を考える。

 ③ たとえる「もの」を決める。

  ※ なりたいものとたとえる「もの」の例を紹介する。

 ④ 「くりもただ」を活用しながら詩を書く。

 ⑤ 比喩を使った創作の感想を書き、友達と交流する。

 

 この授業を実施するにあたっては,

 次のようなワークシートを活用しました。

(1) 作品「たけのこ」の感想(                 )

  (2) 自分は、(          )になりたい。

     将来、(           )のような大人になりたい。

  (3) たとえるもの(       )

     理由や特長(                       )

  (4) 「くりもただ」を活用しながら詩を書く。

  (5) 詩を書いてみて(                     )

 

なおこの実践を通して編纂した卒業詩集「巣立ち」は,

追加資料(別冊)として保管しています。

 

お問い合わせは豊田龍彦まで。

 

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